「遊激展」に参加して─────── 2002年11月18日 松本市民タイムスより 天と地に満ちる生命を表現することをテーマに、先日、松本市美術館で開催された「遊激展」に参加させていただきました。多くの松本の皆さまと、素晴らしい出会いができました。展示ばかりでなく、私の書のパフォーマンスも実現させていただき、美術関係者の方々に深く感謝しています。 私の書の展示とパフォーマンスは、一昨年にオーストラリア、昨年はホーチミン市美術博物館などで行わせていただきましたが、松本市美術館のような、二階から野外の作品を眼下に鑑賞いただける空間は初めてでした。15m×5mという、今までににない大作でしたが、地上からは大きすぎて見えにくい文字も二階から鑑賞していただけました。 「遊激展」は文字通り激しく遊ぶの意味ですが、私は自分のできる範囲を超えた表現に取り組んでみたいと考えていました。この大きな作品も、書くための練習場所も見つからぬまま本番を迎え、不安を禁じ得ませんでした。 しかし、まっさらな大画仙(大きな紙の意)の上に立つと、もう迷いも消え、私の命いっぱいをこの紙の上に書かせてもらうのだ、と夢中で筆を走らせました。というよりも、むしろ勝手に筆が動いて行って、その後に私がついていったと形容した方が適切かもしれません。 書き終わった後は、力全てを使い果たしセミの抜け殻のごとくでした。たくさんの松本の皆さま、無理なお願いに快く対応してくださった美術館関係者の方々、「遊激展」に協力してくださったボランティアの方々、そして、雨の中を、見に来てくださった方々に「心からのありがとう」を胸の奥深く刻ませていただきました。 このご恩に報いることとは、松本で行ったことを肥やしに、この時代、この瞬間に生きるリアルを、全身全霊を傾けて、これからも表現し続けてゆくことであると思います。生きること、愛すること、自由であること、平和であること、そして人間の情けなくって、悲しくって、こっけいな郡分まで考えていったら、表現の終わりなどないように思われます。